利用者の方と向き合い、それぞれ抱えている問題を踏まえて相談や支援を行うのが「ソーシャルワーカー」です。
現在は、社会福祉士や精神保健福祉士といった国家資格を持つ方の多くが名乗っている『福祉分野における相談の専門家』のことをそう呼んでいます。
そして、少子高齢化や身体、精神、経済など多岐に渡り社会構造が複雑化する中において、重要な役割を担う職業となっています。
実は病院にもソーシャルワーカーがいることは知っていますか?病院にいる「医療ソーシャルワーカー(MSW)」について、都立病院の医療ソーシャルワーカーが解説します。
医療ソーシャルワーカーのお仕事
病院にいる『医療ソーシャルワーカー(MSW)』も、患者さんやその家族と向き合い、病院を中心に問題解決に向けた調整や連携を関係機関と行って、自立した生活や社会復帰を促します。患者さん等と直接お会いする「面談(面接)」を通じて信頼関係を築いていきながら、院内外の様々な職種からの情報も加えて状況を整理・分析します。
患者さん一人ひとりが抱える問題に応じた援助の「計画」を提案し、入退院時のみならず、退院後も見据えた手続きに関する相談支援や調整、利用できる社会資源の紹介、社会復帰調整など、具体的な支援を実施していきます。社会福祉や医療・介護に関する知識、国の法律や制度など、幅広い専門知識を基盤に患者さん本人や家族の問題解決にあたります。他にも、地域の関係機関と連携し、患者会やグループ活動の支援も、医療ソーシャルワーカーが役割を担っています。
医療ソーシャルワーカーのはじまり
近年、周知されるようになってきた職種ではありますが、1895年にイギリスで誕生し、その後1905年にアメリカの病院で導入された歴史があります。
日本への導入は1929(昭和4)年に「浅賀ふさ」が現在の聖路加国際病院に勤務をし、アメリカで学んできたソーシャルワークを導入したことが始まりとされています。
第二次世界大戦後の1948(昭和23)年には、結核の蔓延に対応するため、杉並保健所に最初の医療社会事業員として「出淵みやこ」が配置されたことがきっかけとされ、貧困や結核患者を対象に入院援助や医療費問題の解決など行っていきました。
その後、医療機関への配置も進み、医療ソーシャルワーカーの活躍フィールドは大きく広がっていきました。
相談は「患者・地域サポートセンター」へ
これからの日本は、少子・高齢化の加速や医療ニーズの多様化、さらに医療技術の高度化・専門化がより進んでいくと言われています。
そのような中で、社会福祉の立場から患者さんや家族に寄り添い、その不安や経済的・心理的な問題を解決へと導く専門職である医療ソーシャルワーカーは、医療と福祉をつなぐ専門職として期待される職種のひとつとなっています。
都立病院では、全病院に『患者・地域サポートセンター』を設置し、医療ソーシャルワーカーをはじめとした多職種の病院スタッフが、患者さんやご家族の様々なご相談に対応しています。
「不安だな、相談したいな」と思ったとき、『患者・地域サポートセンター』を訪ねてもらえるよう、日々ソーシャルワーカーとしての専門性の向上を図り、チーム医療の一端を担っています。
最終更新日:令和6年8月30日