CTとビートルズの意外な関係

CTとビートルズの意外な関係

みなさんはCTを受けたことがありますか?
CT
は、病院やクリニックで体の中を詳しく調べるための重要な医療機器で、病気の発見に役立っています。実は、このCTが生まれるきっかけになったのは、20世紀を代表する世界的に有名なロックバンド「ビートルズ」だったことをご存じでしょうか?音楽と医療は一見関係がなさそうですが、意外なつながりがあるのです。

今回は、CTについて、そしてCTとビートルズの意外な関係について、都立病院の放射線技師が解説します。

 

CTってどんな仕組み?

CTは、Computed Tomographyの略で、X線を使って体の内部を詳しく撮影する装置です。通常のレントゲン検査は、一方向からしか体を映せませんが、CTは360度あらゆる角度からX線を当てて、コンピュータで断層画像(輪切り画像)を再構成します。これにより、内臓や血管、骨の状態をより詳しく確認でき、立体的な画像を作ることもできます。

CTの登場によって、脳の病気やがん、骨折、出血などの診断精度が飛躍的に向上し、早期発見や治療に大きく貢献しました。この画期的な技術を開発したのはイギリスの技術者、ゴッドフリー・ハウンズフィールドです。彼はこの功績により、1979年にノーベル賞を受賞しました。

CT検査を受ける人のイラスト

ビートルズとは?

ビートルズは、1960年代に世界的な人気を誇ったイギリスのロックバンドです。ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スターの4人組で、「イエスタデイ」「ヘイ・ジュード」などの名曲を生み出しました。

彼らの音楽はポップ、ロック、クラシックの要素を融合し、今も多くのアーティストに影響を与えています。解散後もその人気は衰えず、音楽史に残る伝説のバンドです。

では、そんなビートルズとCTの開発にどんな関係があるのでしょうか?

EMIとビートルズ、そしてCTのつながり

CTの開発には、イギリスの音楽会社EMIが関わっていました。EMIは、ビートルズが所属していたレコード会社としても有名ですが、実は医療技術にも深く関わっていたのです。

1960年代、ビートルズは「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」や「アビー・ロード」などのアルバムを発表し、世界中で大ヒットを記録しました。その結果、EMIは莫大な利益を得ることになります。

当時のEMIは音楽だけでなく、技術開発にも力を入れており、医療や軍事関連の研究も行っていました。その技術部門に所属していたのがゴッドフリー・ハウンズフィールドでした。彼はCTの研究を進めていましたが、開発には多額の資金が必要でした。そこで、EMIはビートルズの音楽で得た利益の一部を、ハウンズフィールドのCT開発の研究資金として提供したのです。

音符イラスト

ビートルズの成功がCT開発を支えた

EMIの資金提供によって、ハウンズフィールドはCTの開発を加速させ、1970年代には、CTが病院で実際に使われるようになりました。これにより、病気の早期発見や診断の精度が大幅に向上し、多くの命が救われることになったのです。ちなみに、日本はCTの普及率が世界的に見ても非常に高い国の一つです。経済開発協力機構(OECD)のデータによると、日本には約13,636台のCT装置があり、人口10万人あたり10.7台と、世界でも突出した保有台数を誇ります。一方、東京都のCTの普及率は全国平均より低い人口10万人あたり7.2台ですが、それでも高い数値です。

もしビートルズが大成功していなかったら、EMIはCT開発の資金を提供できず、その技術の進展も大きく遅れていたかもしれません。音楽と医療がこんな形で結びついていたとは、驚きですね。

音楽と医療の不思議なつながり

このように、ビートルズの成功がCTの開発につながったというのは、まさに「音楽が医療の進歩を支えた」という興味深いエピソードです。私たちが普段聴いている音楽が、実は医療技術の発展を支え、多くの命を救うことにつながっていたなんて、不思議な気がしませんか?
さらに、CTの技術は現在も進化を続けています。近年では、AI技術を活用した画像再構成技術や、X線をより細かく測定するフォトンカウンティング技術の進歩により、低線量でも高画質な画像を得ることが可能になっています。これにより、患者の負担が軽減されると同時に、病気をより正確に発見できるようになっています。
私たちの身の回りには、思いもよらない形でつながっている技術がたくさんあります。もしかすると、今使っている何かが、別の分野の発展につながっているかもしれませんね。
次にビートルズの音楽を聴くときには、「この音楽がCTの開発を支えたんだ」と考えながら楽しんでみるのも面白いかもしれません。 

まとめ

注目情報CTはX線を使い、体内を詳しく調べる画期的な医療機器である

注目情報CTの開発には、EMIという音楽会社が資金提供を行っていた

注目情報EMIはビートルズの所属レコード会社であり、彼らの成功がCTの開発を支えた

注目情報CTは現在も進化を続け、AIやフォトンカウンティング技術が導入されている

音楽と医療、一見無関係なものが深いところでつながっているというのは、とても興味深いですね!

音符イラスト

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最終更新日:令和7年4月16日

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