2月20日はアレルギーの日
2月17日~23日はアレルギー週間です!
アレルギー疾患をもつ子どもは年々増えていますが、そのなかでもとくに受診する人が増えているのが「食物アレルギー」です。食物アレルギーとは何なのか、食物アレルギーで注意すべきことなどを、東京都立小児総合医療センター、アレルギー科部長の吉田幸一先生と専門看護師(アレルギーエデュケーター)の山野さん、井上さん、栄養科の松倉さんにききました。
東京都立小児総合医療センター
アレルギー科部長 吉田幸一
看護師 山野織江、井上三奈枝
栄養科長 松倉時子
注目情報小児総合医療センター | 東京都立病院機構 (tmhp.jp)
いま、受診する子が増えている食物アレルギー
アレルギー科では、アトピー性皮膚炎、小児気管支ぜん息、アレルギー性鼻炎などアレルギー性疾患の病気を診ていますが、食物アレルギーで受診する患者さんが非常に多いのが最近の特徴です。
食物アレルギーとは、食べ物によってアレルギー反応が引き起こされる病気です。アレルギー反応を引き起こす原因となる食物は人によって異なりますが、一般的に鶏卵、牛乳、小麦などが原因となる人が多いです。最近ではナッツ類、特にクルミに対するアレルギーをもつ子どもが増えてきました。
食物アレルギーがみつかるタイミングは離乳食を食べ始める頃に多く、その後の成長に合わせてさまざまなものを食べていく過程でも発症します。
食物アレルギーの症状~皮膚症状が一番多い
食物アレルギーで最も多くみられる症状は、かゆみやじんましん、皮膚の赤みなどの皮膚症状です。食物アレルギーの症状は食べて2時間以内に出現することが多く、皮膚の一部がポコポコと膨らむような感じに変化し、ときには地図のように広がりますが、数時間後には消えています。この点は乳児湿疹やアトピー性皮膚炎の皮膚症状との大きな違いです。
食物アレルギーは、ほかにも目のかゆみや充血、まぶたの腫れなどの目の症状、くしゃみ、鼻水、咳、唇の腫れ、腹痛、下痢、嘔吐などのさまざまな症状が現れることがあります。
また重篤なアレルギー反応は「アナフィラキシー」とよばれ、息をするときに「ゼーゼー」「ヒューヒュー」などと音がする、息切れなどの呼吸器症状がある場合はアナフィラキシーの可能性が高く、一刻も早く医療機関を受診する必要があります。さらにぐったりして意識がなくなる、血圧が下がるなど症状が進行すると生命にとって非常に危険な状態となります。
食物アレルギーの症状が出たときには
緊急時の対応について知らないと、適切な対応はできません。周囲に食物アレルギーの方がいない方でもぜひ知っておいてほしい情報です。
食物アレルギーの症状に気づいたら、症状の内容と程度を確認し緊急性の有無を判断します。
緊急性の判断は東京都が発行する「食物アレルギー緊急時対応マニュアル・ガイダンス1)」が有用です。
意識がもうろうとしている、のどや胸が締め付けられる、繰り返し嘔吐するなどの緊急性の高い症状がひとつでも見られたら、エピペン🄬(アドレナリン自己注射製剤)をただちに使用し救急車を要請します。緊急性の高い症状がない場合は病院から処方された薬(抗ヒスタミン薬)を内服し、急激な症状の変化に備え、エピペン🄬や救急車の要請の準備をします。
食物アレルギーの子どもたちの食事
正しい診断に基づいた必要最小限のアレルゲン(アレルギー反応を引き起こす原因となるもの)除去が食物アレルギー管理の基本です。特に成長期の子どもたちでは安全の確保とともに必要な栄養摂取が大切で、これまでの病歴や血液検査などで正確な診断が行えないときはリスクを踏まえたうえで食物経口負荷試験※を考慮します。
安全確保(誤食を防止するため)には、加工食品のアレルゲン表示制度を理解し適切に食品を選択することが必要となり、成長に合わせて子ども自身も理解する必要があります。外食や中食などのアレルギー表示は食品表示法の範囲外であり、店舗内で製造・販売される総菜やパン、レストランなどでの食事の際は注意が必要です。
一方、原因食物を避けることで成長に必要な栄養が不足するということがあってはなりません。栄養が不足しないよう、食べられる食品に置き換えたり、カルシウム強化食品のような栄養補助食品を取り入れたりするとよいでしょう。
食物アレルギーの原因となる食べ物を食べないことが、アレルギー症状を引き起こさないための基本となります。しかし、日常的に摂取する機会が多く、将来食べられるようになることを期待する食品については、摂取できる範囲を見極めて、医師の指示のもと管理栄養士がどうやったら食べやすいかなどを保護者にお話しします。しかし、「この量は食べても大丈夫」といっても、なかなか子どもは食べてくれないことがあります。そのようなときには見た目にわからないようにして、料理のなかにうまく入れ込むような調理してもらうなどの工夫が必要です。
※食物経口負荷試験
アレルギーを引き起こす可能性のある食物を単回または複数回に分けて食べてもらい、症状が現れるかどうかを確認する検査。原因食物の確定のほかに、安全に食べられる量を決めたりするときに行う検査
ドクターたちからのメッセージ~治療の一歩は正しい診断から
食物アレルギーに限らずアレルギーの診療は大きな転換点を迎えました。患者さん一人ひとりに合わせた対策が大切であることは変わらず、日々成長する子どもたちには成長に合わせ「正しい診断」を更新し、対応方針を柔軟に変化させる必要があります。
東京都ではアレルギーの状態に応じて適切な医療を受けることができるよう取り組んでおり、アレルギー疾患医療拠点病院と専門病院2)を指定しています。都立小児総合医療センターも拠点病院に指定されており、専門的な医療とともに、人材育成や普及啓発活動にも取り組んでいます。
食物アレルギーは日常生活と大きなかかわりをもつ病気で、安全に生活するためには自ら情報を収集する、自らの病状を周囲に理解してもらうことが必要です。病気を抱え不安なこともあるかと思いますが、お困りの際はかかりつけの先生にご相談いただいてアレルギー専門医やアレルギーを専門とする看護師、栄養士、薬剤師などをご活用ください。
また行政機関や医療機関が講演会・講習会を開催しており、これらを利用して情報を入手することも安心した暮らしにつながると思います。
都立小児総合医療センターでは、食物アレルギーの子どもや保護者を対象にした講習会を定期的に開催しています。
成長すれば保育園・幼稚園、学校と家以外で過ごす時間が長くなるので、当事者である子どもたちにも「症状がでたときは、必ず大人に伝えるんだよ」という注意とともに、病気について説明する機会をつくっています。小学生からは、子どもたちの成長に合わせて、エピペン🄬の使い方や管理方法について保護者と一緒に学んでいます。
また、保育園・幼稚園、学校の先生方にも食物アレルギーを知ってもらうための講習会を開催しています。
小学生を対象にエピペン🄬子ども教室なども行い、本人にも食物や栄養について勉強してもらっています。
このような講習会は、患者さん同士、保護者同士と同じような悩みをもち、病気と向き合っている人が出会う機会にもなります。自分の子どもよりも年長の子をもつ保護者から経験を踏まえた情報やアドバイスを得ることができるので、非常に有意義なのではないでしょうか。
また、お子さん本人も身近に食物アレルギーの子どもがいないケースも多いですが、自分と同じようにアレルギーをもつ仲間と出会うことで「自分だけではない」ということを実感してもらえているようです。
1)東京都アレルギー疾患対策検討委員会 監:東京都立小児総合医療センターアレルギー科 編集:食物アレルギー緊急時対応マニュアル(平成30年3月改定)
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/allergy/pdf/zenbun1.pdf(外部リンク)
2)「東京都アレルギー情報navi.」東京都アレルギー疾患医療拠点病院及び専門病院
https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/allergy/effort/medical.html(外部リンク)
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最終更新日:令和6年12月23日