生活習慣病とは?

生活習慣病とは?

生活習慣病とは、食事や運動、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣が深く関わり、それらが発症の要因となる病気の総称です。
日本人の死因の上位を占める、がん心臓病脳卒中は、生活習慣病に含まれます。
以前は成人病とも呼ばれ、大人の病気と考えられていましたが、生活習慣の乱れがあれば、小学生でも生活習慣病になる可能性があり、注意が必要です。

身近に潜む生活習慣病について、都立病院の心不全看護認定看護師が解説します。

 
まずは、2人の生活を見てみましょう。

<Aさんの生活>

ノートパソコンを使用する男性

私の仕事はデスクワークです。
仕事中に歩くことはなく、
ほとんどパソコンに向かって仕事をしています。

電車に乗る男性

通勤は電車で、歩くのが嫌いで、とにかく座っているので、
1日の歩数は3000歩程度しかありません。

カップラーメンとハンバーガー

好きな食べ物は、ファストフード、カップラーメン。
楽だし、好きで毎日食べます。
自炊しないから野菜は食べないかな。

準備運動をする男性

若いころは運動部だったし、痩せてたんだけどね。
仕事も忙しいから、運動するのはなかなか難しいよね。

体型を気にする男性

これまでとそんなに生活が変わったわけじゃないんだけど、
ここ数年で体重が増えてきて、お腹も太くなった気がするな。

健康診断の結果に不安になる男性

今回の健康診断で、悪玉コレステロールが高くなっている点を指摘されたから、病院に行かないと。

Aさんの病気は脂質異常症です。脂質は体に必要なエネルギーですが、運動で消費されず、過剰に摂取されると、徐々に脂肪として体に溜まっていきます。
血管の中にも脂質が多い状況となり、悪玉コレステロールが増えてくると、血管の壁に貼りつき、血管を狭くしたり、硬くして、動脈硬化となり、徐々に血液の流れが悪くなっていきます。

 

<Bさんの生活>

忙しく働く男性

私はとにかく仕事が忙しいので、毎日大変なんです。
朝ごはんなんて食べてる時間がもったいない。
昼もたまに食べるくらいです。

喫煙のために休憩する男性

タバコは好きです。1日40本は吸うかな。

(注)1日のタバコの本数×吸っている年数で計算される値をブリンクマン指数といいます。
ブリンクマン指数が400以上で肺がんリスクが向上し、
700以上となると肺がん、喉頭がんリスクが数十倍になるといわれています。

大急ぎで食事をとる男性

朝食、昼食を抜く分、夜はたくさん好きなものを食べるのが楽しみです。
太ってもいないし、それなりに健康でしょう。

健康診断の結果を見て落胆する男性

太ってないから大丈夫だと思っていたのに、
健康診断で血糖値が高いので受診しなさいと書かれてました。
調子は悪くないのに。

Bさんの病気は糖尿病です。食事によって体に取り込まれた糖質は、ブドウ糖に分解され、血管内に入ります。
血管内にブドウ糖が入るとすぐにインスリンというホルモンが分泌され、ブドウ糖は細胞に取り込まれます。
1日1食などの不規則な食事、過度な喫煙と飲酒などにより、インスリンの効き目が弱まってしまうと、ブドウ糖が血管内に留まり、高血糖と呼ばれる状態となります。
血管内にあるブドウ糖は、血管の壁を硬くしてしまい、動脈硬化につながります。

健康診断のすすめ

健康診断

脂質異常症や糖尿病により、全身の動脈硬化が進むことで、特に細かな血管が集まった臓器の障害が起こりやすくなります。
特に細かな血管が集まる臓器としては、心臓、脳があり、それぞれ心筋梗塞や脳卒中につながる可能性があります。
脂質異常症や糖尿病は初期では症状が出ないため、定期的に健康診断を受けることが重要です。

高血圧とは?

動脈が硬くなると、血管のやわらかさが失われるため、血の流れに対する拡がりが少なくなり、高血圧になります。
高血圧も初期では症状が出ないため、健康診断を受けることが大事になります。
脂質異常症と糖尿病も高血圧の原因になりますが、高血圧の一番の原因は塩分の摂りすぎであるとされています。

日本人と塩分

日本人の食生活は塩分摂取が多い傾向にあり、世界的に見ても日本人の塩分摂取量は世界4位の平均12.4g1) となっています。
WHO(世界保健機構)は、塩分の摂取量を1日5g以下にするよう推奨していますが、しょうゆ、塩、味噌を味付けの基本とする日本では現実的でないため、「日本人の食事摂取基準(2020年版)2) の目標量では、成人男性で7.5g未満、成人女性で6.5g未満を目標値としています。
厚生労働省の減塩のコツ3) を参考に減塩を目指しましょう。

塩分摂取量の国際比較グラフ

減塩のコツ

減塩を勧める人
  • 漬け物は控える
    →自家製浅漬けにして、少量に
  • 麺類の汁は残す
    →全部残せば2~3g減塩できる
  • 新鮮な食材を用いる
    →食材の持ち味で薄味の調理
  • 具だくさんのみそ汁にする
    →同じ味付けでも減塩できる
  • むやみに調味料を使わない
    →味付けを確かめて使う
  • 低ナトリウムの調味料をつかう
    →酢・ケチャップ・マヨネーズ・ドレッシングを上手に利用する
  • 香辛料、香味野菜や果物の酸味を利用する
    →こしょう・七味・しょうが・かんきつ類の酸味を組み合わせる
  • 外食や加工食品を控える
    →目に見えない食塩が多く含まれている。塩干物にも注意する

生活習慣病の予防

生活習慣病は、不適切な生活習慣が関与するため、生活習慣を改善すれば、予防することができます。
1日3食の食事、適度な運動、禁煙、適度な飲酒をこころがけましょう。
特に運動習慣の確立は、生活習慣病予防に効果が高いとされています。

 

運動の効果

運動量が多くなることや、散歩などの有酸素運動を行うことで、エネルギーがたくさん消費され、内臓脂肪が燃焼されやすくなります。
内臓の働きも活発となり、糖や脂質の代謝、血液の流れや、血管のやわらかさも改善され、肥満の予防・改善や、血糖値や脂質、血圧の状態改善につながります。

ウォーキング

運動習慣のない人は、まず1日30分の散歩から始めてみましょう。
肩で息をするようになったら休むようにすると、体の負担にならない程度で運動できます。
暑い日などはショッピングモールなど、涼しい環境を選んで運動を行いましょう。

 

引用参考文献

1)橋本壽夫 「世界各国の塩摂取量を網羅した論文公表」たばこ塩産業

2)厚生労働省、日本人の食事摂取基準(2020年版)

3)宮本恵宏、特定保健指導の対象とならない非肥満の心血管疾患危険因子保有者に対する生活習慣改善指導ガイドライン2018

最終更新日:令和6年10月7日