肌の健康寿命を守る「スキンフレイル」対策

スキンフレイル対策

皆さん、「スキンフレイル」という言葉を聞いたことがありますか?
スキンフレイルとは、主に高齢者や体力が低下している人に見られる「皮膚の虚弱(きょじゃく)」の状態を指します。この状態では、皮膚が薄くなり、弾力が低下し、とても傷つきやすくなります。

<皮膚の役割>
皮膚は体重の約16%を占める最大の臓器と言われており、以下のような大切な役割があります。

  • 外部の刺激から体を守る保護作用
  • 暑い時には汗を出し、寒い時には体温を奪われないようにする体温調節作用
  • 痛覚や温・冷覚などの感覚をとらえる知覚作用 など

皮膚は私たちの体を守るために非常に重要な働きをしています。

今回は、そのような大切な役割のある皮膚に起こる「スキンフレイル」について、都立病院の皮膚・排泄ケア特定認定看護師が解説します。

スキンフレイルはなぜ起こるの?

1. 加齢

年齢を重ねると、皮膚の弾力を保つ成分(コラーゲンなど)が減少します。そのため、皮膚のはりが低下し、外からの衝撃に弱くなります。

2. 乾燥

皮膚の表面には「皮脂膜」という膜があり、これが外部の刺激から皮膚を守っています。しかし、加齢や秋から冬にかけての気候の変化、体調不良により皮脂が減少すると、皮膚は乾燥しやすくなり、摩擦などで傷つきやすくなります。

3. 紫外線

紫外線は、皮膚にシミを作るだけでなく、コラーゲンを減らし、皮膚を薄くして弾力性を低下させます。その結果、皮膚のシワやたるみが増えます。

紫外線

4. 生活習慣

栄養バランスの悪い食生活や不規則な生活習慣も皮膚に悪影響を与えます。ビタミンやミネラルが不足すると、皮膚の再生能力が低下します。

5. 病気や薬の副作用

糖尿病や腎臓病などの病気や、ステロイドなどの薬は、皮膚を弱くすることがあります。これらの病気や薬の影響で皮膚の弾力性が失われやすくなります。
 

スキンフレイルにはどんな症状があるの?

1. 皮膚が薄くなる

触ったときに皮膚が柔らかく、弾力を感じません。皮膚の厚みが減ることで、外部からの刺激に対して非常に弱くなります。

2. 皮膚にシワやたるみが増える

コラーゲンなどの減少によって皮膚のはりが低下し、シワやたるみが目立つようになります。

3. 傷ができやすく、治りにくい

ちょっとした衝撃や摩擦で皮膚に傷ができやすくなり、その傷も治りにくくなります。軽くぶつけただけでもアザができたり、かゆくてかいた部分が切れて傷になることがあります。

4. 皮膚が乾燥しやすくなる

皮脂が少なくなり保湿機能が低下するため、肌が乾燥してかゆみやひび割れが生じやすくなります。
 

スキンフレイルの予防と対策のポイントは?

日常生活の中で適切な対策を取ることで、スキンフレイルの進行を遅らせ、症状を軽減することができます。以下のポイントを参考に、スキンフレイルへの意識を高めておきましょう。

1. スキンケア

皮膚の乾燥を防ぐために保湿クリームなどで潤しましょう。特にお風呂上がりは乾燥しやすく、保湿を欠かさないことが重要です。洗う時は強くこすらず、泡で優しく洗うことも大切です。

スキンケア

2. 紫外線対策

外に出るときは日焼け止めを塗りましょう。紫外線は肌の老化を進める大きな原因です。

3. 栄養バランスのとれた食事

エネルギーとタンパク質を十分に摂りましょう。1日3食しっかり取る、毎食タンパク質の多い食品(肉・魚・卵・乳製品・大豆製品)を1品以上取り入れましょう。また、にんじんやレバーなどのビタミンA、魚介類に含まれるビタミンD、ナッツ類からビタミンE、果物などでビタミンCを摂りましょう。これらの栄養素は皮膚の再生や保湿に役立ちます。

スキンフレイル予防の食事

4. 適度な運動

運動は全身の血流を良くして皮膚の新陳代謝を促進します。ウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲で体を動かしましょう。

5. 規則正しい生活

睡眠をしっかり摂り、規則正しい生活を送ることで体の回復力を高め、皮膚の再生を助けます。

6. けがに注意

手足をぶつけたり、転ばないように注意することも大切です。けがで皮膚が傷つくとそれが原因で感染症につながるリスクもあります。長袖の服や靴下を身に着けることや家具の角にカバーを付ける等の対策を行いましょう。もし傷ができた場合はすぐに傷を洗いましょう。
 

スキンフレイルになっていないか、チェック!

自分の腕などを見て、当てはまる項目にチェックするだけで、簡単にスキンフレイルを判断できます。

「はり低下」の項目に1つ以上、「乾燥」の項目に3つ以上当てはまる場合は、スキンフレイルが疑われます。

注目情報はり低下

  1. 肌をつまむと容易に伸びる
  2. 肌をつまんで離しても戻らない
    (該当する場合、1もチェックする)
  3. 肌がティッシュペーパーのように薄くかさかさしている
  4. 痛みやかゆみのない紫色のアザが繰り返しできる(注射のあとは除く)

注目情報乾燥

  1. 肌の表面が白い粉をふいている
  2. 肌の表面に小さい「フケ」のような薄皮がある
    (該当する場合、5もチェックする)
  3. 肌が硬くないがふれるとチクチクしている
  4. 肌が硬く、なでるとガサガサしている
    (該当する場合、7もチェックする)
  5. 一部が赤くなっており、押すと消える
  6. こまかな網目のようなシワがある

淑徳大学看護栄養学部 飯坂教授 作成:スキンフレイルチェックリスト

スキンフレイルを予防して、元気な肌を保ちましょう!

引用 参考文献

  1. 飯坂真司ほか日本創傷・オストミー・失禁管理学会誌 2018.22(3):287-296
  2. 持田ヘルスケア株式会社(持田製薬グループ)ホームページ「スキンケア講座.スキンフレイルとは?セルフチェックや予防のポイント」2024年10月24日参照

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最終更新日:令和6年12月18日