2月20日はアレルギーの日
2月17日~23日はアレルギー週間です!
症状がよくなったり悪くなったりをくり返すアトピー性皮膚炎は、付き合い方の難しい病気の一つと思われてきました。たしかに長く付き合っていかなければなりませんが、ここ数年アトピー性皮膚炎の治療は大きく進歩しています。東京都立小児総合医療センター、アレルギー科部長の吉田幸一先生と専門看護師(アレルギーエデュケーター)の山野さん、井上さんにアトピー性皮膚炎の治療とケアについてききました。
東京都立小児総合医療センター
アレルギー科部長 吉田幸一
看護師 山野織江、井上三奈枝
注目情報小児総合医療センター | 東京都立病院機構 (tmhp.jp)
アトピー性皮膚炎の症状
アトピー性皮膚炎の主な症状は、かゆみを伴う湿疹です。実際には「かゆみ」「小さなブツブツ」「カサカサ」「ジュクジュク」「赤み」「皮膚が厚くなる」「かさぶた」などの症状が現れます。
アトピー性皮膚炎の症状は、子どもの成長にしたがって出やすい場所が変わっていきます。乳児期では顔に出ることが多く、そこから全身に広がっていきます。学童期になると首やひじの内側、手首など関節のあたりに症状が出やすくなります。
湿疹のできる場所が変わることで、病気が悪化しているのではないかと心配される方がいますが、これは病気の重症化ではなく年齢的な特徴ですのでご安心ください。
アトピー性皮膚炎は皮膚のバリア機能の低下が影響
アトピー性皮膚炎の原因のひとつに、「皮膚のバリア機能の低下」があります。
皮膚は常に外界と接しており、ダニや細菌などの病原体の侵入を防ぐ「壁」の役割を果たしています。また、さまざまな刺激を感じ取るセンサーとして、免疫にも大きく関わっています。この「バリア機能」が低下すると、病原体だけでなくホコリや食物などのアレルゲンが侵入しやすい状態となり、アレルギーの症状が起こりやすくなります。
乳児期のアトピー性皮膚炎にはじまり、その後、成長の過程で食物アレルギー、気管支ぜん息やアレルギー性鼻炎(花粉症)などさまざまなアレルギーが発症する現象は「アレルギーマーチ」と呼ばれており、乳児期における皮膚バリア機能の低下がその後のアレルギー疾患の発症に大きな影響を与えているのではと考えられています。赤ちゃんの皮膚がカサカサしている、赤くなっているなどバリア機能の低下に気づいたら、早めにスキンケアをして皮膚のバリア機能を正常に保つようにしましょう。
アトピー性皮膚炎のスキンケア
からだの洗い方や保湿剤の塗り方などのスキンケアは、正しい方法で行うことが大切です。正しいスキンケアを知り、それを実践することで多くの子どもの症状がよくなっています。
洗い方のポイントは3つ。
石けんをよく泡立てる
泡で浮かせた汚れを包み込んで落とすため、石けんはよく泡立ててから肌に乗せます。
しわのあるところを伸ばして洗う
- 肘や膝などの関節、脇など皮膚が重なる部分はしわができやすく湿疹が出やすいので、しわを伸ばして洗います。
手でもむように洗う
- タオルなどでゴシゴシ洗うのは皮膚に刺激を与えます。よく泡立てた石けんを手に乗せ、やさしくもむように洗います。
- この手順で丁寧に洗ったら、石けんが残らないようにしっかりとすすぎます。
入浴時の注意としては、熱すぎるお湯は皮膚への刺激になるので、38~40℃くらいのぬるめにしたほうがよいでしょう。
お風呂からあがったら、すぐに保湿剤やステロイド外用薬などの外用剤を塗ります。
外用剤の塗り方のポイントは4つ。
洗ったらすぐに塗る
- 水分を拭き取ったらすぐに外用剤を塗りましょう。
すり込まない
- しっかりとすり込むほうが効果を期待できそうな気がしますが、むしろ逆効果。皮膚に乗せるように塗り広げましょう。
適切な量を塗る
- 塗る量には目安があります。決められた量を守って塗りましょう。少ない量では効果が十分に得られないことがあります。
注目情報外用剤を塗るときの適切な量
大人人差し指の第一関節分(約0.5g)が、大人の両手のひら分の面積に塗る量の目安です。ティッシュが一枚張り付く程度のぺたぺたした使用感になります。
(注)チューブ出口の大小により、若干異なる場合があります。
しわを伸ばして塗る
- 洗い方の基本同様、関節などにできるしわの部分も外用剤がしっかり届くようにしわを伸ばして塗りましょう。
小さいうちは保護者が子どものからだを洗ってあげ、入浴後に外用剤を塗っていると思いますが、成長するにしたがって、子どもが自分で洗い、自分で外用剤を塗るようになっていきます。そんなタイミングで一時的に症状が悪化することがあります。それは多くの場合、洗い残しやすすぎ残し、外用剤がしっかり塗れていないことが原因と考えられます。
自分で入浴し、外用剤を一人で塗ることができる年齢になったら、親子でスキンケアの練習をしてみましょう。洗い残しやすすぎ残し、塗り残しがないか、チェックしながらやってみるとよいですね。
また、皮膚の赤みや湿疹が見られなくなったからといって、すぐに外用剤を中断しないようにしてください。見た目にはきれいな皮膚でも、実際に触れてみるとまだザラザラしていることがあります。そのような段階で薬をやめてしまうと再び悪化することがあるので、薬をやめるタイミングは医師と相談しながら決めていきましょう。
ドクターたちからのメッセージ
~アトピー性皮膚炎はコントロールできる病気になりつつある
ここ数年、アトピー性皮膚炎の治療の選択肢が増えてきました。治療に使う外用剤の種類も増えていますし、重症の人には生物学的製剤というタイプの薬なども登場し、アトピー性皮膚炎はコントロールが可能な病気になってきました。
ただし、薬による治療だけでは不十分で、規則正しい生活、バランスのよい食事、ダニやホコリなどアレルゲンとなるものの対策も大切です。そして、今回のコラムでも紹介していますが、正しいスキンケアにより皮膚のバリア機能を正常化することが何よりも大切です。
繰り返しになりますが、バリア機能が低下した皮膚はダニや食物などアレルゲンの侵入を容易にしてしまいます。皮膚の弱い赤ちゃんに皮膚症状がみられた場合はすみやかに「バリア機能」を回復するためスキンケアを始めましょう。
毎日のスキンケアによる負担を少なくし効果を上げるには、正しいスキンケアの習得は欠かせません。
小さい時期は保護者が、そしてある程度の年齢になると子ども自身がスキンケアを習得する必要があります。子どもが自分でスキンケアができる年齢になってきたら、アトピー性皮膚炎という病気について説明し理解してもらいましょう。そのうえで、正しいスキンケアができるように親子で取り組んでいくとよいでしょう。子どもの主体性を促しながら、保護者は塗り残しがないかなどチェックし、症状が悪化しないように見守り、フォローしていっていただけたらと思います。
1)厚生労働省:令和2年患者傷病分類編(傷病別年次推移表)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/10syoubyo/dl/r02syobyo.pdf(外部リンク)
参考
- 大矢幸弘 監:「ぜん息悪化予防のための 小児アトピー性皮膚炎ハンドブック」,独立行政法人環境再生保全機構,2009年
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最終更新日:令和6年12月25日