いまから始める熱中症予防

5月5日は熱中症対策の日

この夏も猛暑は確実にやってくる。いまから始める熱中症予防

毎年夏になると、気温の上昇に伴い、熱中症による救急搬送が増えます。2024年の5月から9月にかけて熱中症で救急搬送された人は97,578人にのぼり、2008年の調査開始以来、最も多い数字となりました1)。この夏もまた、危険な暑さがやってくることでしょう。
そこで、熱中症とは何か、熱中症が起こりやすい条件、さらには予防対策について、東京都立多摩総合医療センターの救命・集中治療科部長の清水敬樹先生にききました。

東京都立多摩総合医療センター
救命・集中治療科部長 清水 敬樹

吉岡部長写真

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熱中症の原因となる3つの条件

通常は暑さで体温が上昇しても、汗をかき、からだから熱を逃がすことで体温を下げます。しかし、体温調節がうまくいかず体内に熱がこもってしまうと体温が上昇し、熱中症を引き起こします。熱中症の発症と大きくかかわる条件に「環境」「からだ(体調)」「行動」があります。

 

1. 環境

環境と熱中症の関係とはなんでしょうか。

「暑熱環境」と呼ばれる環境条件が影響します。気温が高いことだけでなく、湿度が高い、風が弱いなどが加わると熱中症のリスクが高まります。家のなかでもエアコンを使わず、窓を閉め切った状態では、まさしく熱中症を引き起こす環境といえます。

2. からだ(体調)

次は体調と熱中症の関係についてです。

からだ、つまり体力や体調も熱中症のリスクに大きく関わります。特に、高齢者や乳幼児、腎臓や心臓に疾患がある人などは注意が必要です。また、健康な若者でも、下痢などで脱水症状を起こしていると、熱中症になりやすくなります。ほかにも睡眠不足病後、高血圧や糖尿病といった生活習慣病がある人も熱中症のリスクが高まります。

3. 行動

最後に行動と熱中症の関係です。

暑いところ、暑い時間帯に外出することが熱中症を引き起こす最大の条件となります。とはいえ、夏の間中冷房の効いた室内に籠るわけにもいきませんから、夏の日に出かける場合には、十分な準備が必要です。

各自治体では「クーリングシェルター(指定暑熱避難施設)」など涼しい避難場所を提供しているので、事前に調べておくと安心です。夏場は定期的に冷房の効いた場所でクールダウンすることを習慣にしましょう。

 

熱中症の予防対策

熱中症の予防は、危険な暑さの日には外出を避け、家にいる場合にはエアコンを使って快適な室温を保つことが大切です。また、以下の予防対策も効果的です。

暑さ指数(WBGT)をチェック

暑さ指数(WBGT)とは、気温、湿度、輻射熱(日差しを浴びたときに受ける熱、地面や建物からの反射熱)を基に熱中症のリスクを示す指標です。WBGTが28を超えると、熱中症の危険が急増します。最近は天気予報でもWBGTに触れていることがあるので、参考にして行動を見直しましょう。

暑い時期の部活動では指導教員が、屋外での作業現場では工事の監督者が、適切な休憩と水分補給をするように積極的な働きかけをしなくてはいけません。

 

暑さにからだを慣らす

暑さにからだを慣らすことを「暑熱順化(しょねつじゅんか)」といいます。暑さにからだが慣れていないと、熱中症のリスクが高まります。8月下旬に比べ7月下旬に熱中症の重症者が多い理由の一つは、暑さにからだが慣れていないためです。梅雨前の少し暑い日に、ウォーキングをして汗をかくことで、暑熱順化を進めることができます。夏がくる前に暑さに負けないからだをつくりましょう。

 

定期的な水分補給

喉が渇いたと感じたらすぐに水分補給をするようにします。むしろ、喉が渇く前に水分補給をするように心がけましょう。高齢者のなかには喉の渇きをあまり感じない人もいるので、時間を決めて水分を摂ることが大切です。塩分を含んだ飲料水が理想ですが、水やお茶で十分です。

 

服装を工夫する

暑い日には、通気性が良く、吸水性・速乾性に優れた服を選びましょう。黒色など熱を吸収しやすい色は避け、淡い色の服などを着ることが推奨されます。そして、肌に直接触れる肌着やTシャツなどの着替えを持って出かけるのもよいかと思います。着替えを持ち歩くことを新たな夏の習慣にすることも考えてみてはいかがでしょう。また、日差しを避けるために日傘や帽子を使うとよいでしょう。

 

熱中症かも こんなときはどうする?

熱中症の初期症状には、めまい倦怠感体温の上昇異常な汗のかき方筋肉痛けいれんなどがあります。これらからだの変化から自分で「熱中症かも?」と思ったら、ただちに涼しいところに移動し水分を摂取しましょう。しばらく安静にしていても症状が改善しない場合は、迷わずに病院を受診することが必要です。

また、熱中症の人が周りにいる場合、すぐに涼しいところへ移動させ、水分を摂取させましょう。洋服のボタンも少し外して楽になるようにします。自分でペットボトルを手に取って飲めるようならそのまま安静にし、自力で水が飲めない場合は救急車を呼んで病院へ向かう必要があります。「自分で水が飲めるかどうか」が救急車を呼ぶかどうかを判断するものになります。

ドクターからのメッセージ~

今後も夏になれば厳しい暑さに見舞われるでしょう。熱中症にならないためには、真夏の昼間は外出を避けるようなライフスタイルに努めて、家にいるときはエアコンを使って快適な室温を保つことが基本です。

屋外での作業や運動時は熱中症にならないように注意し、少しでも熱中症のサインがみられたら、周りの人は、早急に対応できるようにしましょう。

一人暮らしの高齢者の場合、熱中症にかかっても気づかれるまでに時間がかかることがあります。特に基礎疾患のある人は、からだのわずかな変化を見逃さないようにしましょう。イギリスでは、コミュニティ内での見回り制度があり、熱中症対策の一環に組み込まれています。日本でも厚生労働省が各自治体に向けて、熱中症対策のための高齢者の見守り・声かけについて協力依頼をしています 2)

この夏も猛暑は確実にやってきます。真夏の行動を気温などの自然環境に合わせて変化させ、熱中症から命を守っていただきたいと思います。

 

参考

注目情報熱中症予防のための情報・資料サイト | 厚生労働省 (mhlw.go.jp)(外部リンク)

注目情報東京都熱中症対策ポータルサイト|ヒートアイランド対策|東京都環境局 (tokyo.lg.jp)(外部リンク)

注目情報クーリングシェルター等のマップ公開~街中の暑さをしのぐ施設をご活用ください~|東京都防災ホームページ 携帯電話版 (tokyo.lg.jp)(外部リンク)

 

関連するリンク

注目情報生活習慣病とは? | 東京都立病院機構 (tmhp.jp)

注目情報糖尿病と食事 | 東京都立病院機構 (tmhp.jp)

最終更新日:令和7年4月23日

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