2001年11月号 外来で名刺交換

2001.11月号

 当院の連携医制度には皆様ご存じのように、ふたつの大きな特徴があります。一つは逆紹介制度です。紹介状を持たずに当院を受診した患者さんに、住居近くの かかりつけ医を紹介するこの制度は、昨年4月からは健康保険請求でも取り入れられました。この言葉の発信源は当院であると私は信じております。
 さらにユニークなのは副主事医制度です。歯科連携医の方々には、特に有効にご利用いただいております。当院で行われる治療に患者さんの副主事医として参 加できる制度です。病院によっては見学すら認めていないところも少なくありません。
 毎月のように、当科には患者さん同伴でいらっしゃる連携医の姿がみられます。紹介した患者さんの難抜歯の実際を見届けたい、抗血小板薬服用中の患者さん の抜歯を見てみたいなど、口腔外科処置が多い傾向にあります。また、痴呆患者さんの治療の全身管理を頼まれることもあります。歯科治療に対する理解力が先 天的に足りない方に静脈内鎮静法を行いますと、抑制がとれすぎて譫妄状態に陥ってしまい、かえって治療にならなくなります。
 しかし、かつては充分に理解力のあった痴呆の方には、静脈内鎮静法が大きな威力を発揮します。このことに気が付いている歯科医は非常に少ないと思いま す。そもそも、都心の歯科大学病院まで、痴呆の方を搬送することが非常に困難で、このような方の治療機会に恵まれないからです。
 静脈確保の時だけは動かれないように抑制が必要ですが、鎮静剤が効き出しますと、大きな支障なく治療することが可能です。痴呆の方に全身麻酔をかけると 症状が進むことが報告されておりますが、静脈内鎮静法ではそのようなことは経験しておりません。いずれ、機会をみて学会に報告するつもりでおります。この ような患者さんの治療にお困りの先生方は是非一度ご相談下さい。必ずお役に立てます。
 患者さんが初めて歯科の門を叩くには、大きな勇気が必要とされます。紹介状をもたずに当科を受診する患者さんは心細いに違いありません。かかりつけの先 生から紹介状を持たされるだけで、患者さんの気持ちにはゆとりが生まれます。ましてや、かかりつけの先生がわざわざ当科に出向き、傍らに付き添って治療の 一部始終を見守ってくれることは、非常に安心であり、大きなサービスであると思います。ご自分の診療スケジュールをお知らせ下さり、治療参加の曜日と時間 帯をご希望なさる先生もいらっしゃいます。少しでも多くの連携医の方々が当科での治療にご参加いただけるよう、できるだけの便宜をおはかりいたします。い つでも遠慮なくご相談下さい。
 われわれも常勤わずか3人。副主事医制度は連携医の方々との絶好の交流機会であると捉えております。
 1年ほど前のある日、外来で非常にうれしいことがありました。この日、患者同伴で当科を訪れた連携医は二人いらっしゃり、外来でお二人が初対面の名刺交 換をなさっている姿が見られたのでした。
 12月号では、恐らく二度と遭遇することがないような、下顎部腫脹症例をご紹介する予定です。

歯科コラム