2010.11月号
どのジャンルにも仕事をされているその場でのみ通じる言葉があるのではないでしょうか。学生の頃友人と行った寿司屋さんは、とにかくネタが大きくて若者にはありがたいお店でしたが、会計時にレジの人が板前さんに値段を聞く時の呪文のような会話は非常に不安でした。
「さしびんの、にぎりがげたで…」
これがお刺身1人前、握り寿司が3人前だということは後から解ったのですが、びんは1つを表し(麻雀のご経験があればわかりますね)、げたは3つを表していました(下駄の穴は3つだから)。明細もあるようなないようなものでしたので、キツネにつままれたようなお勘定でもありましたが、不思議と食べた量にかかわらず、いつも同じぐらいの額でした。
さて、以下は単に略語の話ですが、歯科診療室で日常的に飛び交う言葉に浸麻(シンマ)と伝麻(デンマ)があります。浸麻=浸潤麻酔のことで、誰でも一度は経験していらっしゃるあの歯肉へ注射する局所麻酔です。アシスタントに「シンマ用意して下さい」とお願いするとあの注射器が出てきます。知らない方が良いこともありますね。
総合病院で「シンマ」と言えば心臓マッサージの方が一般的かもしれません。当科の臨床研修医(岩丸先生・東北大卒)も今年度上半期に、入院中の患者さんの病状が急変し応援が到着するまで救急処置としてお手伝いをさせていただきました。
さて、もう一方の「伝麻」は伝達麻酔の略で浸潤麻酔と併用することがときどきあります。注射針が若干異なるため「デンマもお願いします」と言います。ところで、診療台で横になっていらっしゃる患者さんは「デンマ」と聞いて何を用意されるのかと不安に思ってないでしょうか?先日同僚のスタッフと笑い話になりました。
もしかしたら…電気のあれかしら?と。