2024年1月号
歯科口腔外科 長谷川士郎(はせがわしろう)
最近三叉神経痛の患者さんが続きましたので、まとめてお伝えしたいと思います。三叉神経痛は瞬間的で激烈な電撃様 仏痛を呈する発作性の神経障害性仏痛であり、稀な疾患では ありませんが初期には典型的な症状を示さないこともあり、診断に迷うことがあります。
患者さん A:虫歯の治療をしても症状が治らないとの経過で来院されましたが、初診の問診聴取時から発語しようとす ると頬に電撃痛が走り、「会話ができない」と顔をしかめ非常に辛そうでした。一旦カルバマゼピン(テグレトール ®)を処方させていただき1週間後に症状の緩和が得られましたが、初診時の印象が大きかったこともあり、脳神経外科へ精査依 頼いたしました。やはり三伹神経痛の診断で継続通院していただいております。
患者さん B:半年前より歯が痛く、歯科医院を受診するも異状なしとの診断。別の歯科医院を受診し歯の治療をしたが、症状が改善しないため食事が進まず、体重減少で家族も困っ ているようでした。この方は口腔内を診ようと口唇に触れたところ激痛を呈しましたが、要介護状態でもあり、当日に脳神経外科を受診していただきました。お二人に共通する点は、初期の段階では当科来院時のような特徴的な病態像を呈していない時期であったので、歯が原因の痛みと判別がつきにくかったと考えられます。成書によりますと、数カ月~一年以上かけて典型的な症状が揃うことも多いようです。
患者さん C:1,2 カ月前からの発症で、当科来院時は左の頬と顎下部を押さえると痛いとの愁訴でした。そして、「今、症状は少し軽快している、でも一時はちょっと触れただけでも左側顔面全体が痛いことがあった」とのコメントでした。紹介状に記載されているように歯に原因は見当たらず、この方には診断を兼ねてテグレトールを処方し経過を観ることにしました。処方量により眠気やふらつき、アレルギーの副作用に注意しなければならないので、翌日に TEL で重篤な副作用が生じていないか確認しています。
患者さん D:一方で一旦症状が軽快後に再発する方もいらっしゃいます。この方は2度目の再発ですが、いずれも1カ月程度の服薬で症状軽快したので服薬終了したところ、同じように約1年で再発しています。以前と同様の症状を確認した後、処方歴を参考に再び対応しています。
このように三叉神経痛は初発時から特徴を示している場合は診断が容易で内服によるコントロールが可能です。歯に明らかな原因がなければ、歯を削る前に歯痛の鎮痛剤が効くかなどを確認していただくのもよいと思います。
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