2012年3月号 わたし、麻酔がダメなんです!!

2012.3月号

 よく耳にするセリフではないでしょうか。当科にも”自称”麻酔アレルギーの方が、時折いらっしゃいます。「麻酔の時に何があったんですか?」と聞くと、ほとんどの人は、「気分が悪くなった・気を失った・アレルギーと言われた」と答えます。

 文献によれば、歯科治療で局所麻酔薬の注射を受けた患者の2.5〜10%が、なんらかの異常反応を経験しています。これは、医科におけるそれの約10倍で、その原因の8〜9割が心因性・血管迷走神経反射です。やはり、皆さん歯医者が苦手みたいですね。そうした経験は、本人・医療者ともに非常にインパクトが強く、双方とも「麻酔がダメだ! 治療できない!!」と、そのまま歯科治療恐怖症になってしまうケースも珍しくありません。こういった方には、当科では静脈内鎮静法を使います。大変心地がいいようで、全例が何事もなく治療できています。

 では、局所麻酔でアレルギーはどのくらい起こるのでしょうか?
リドカインによるアナフィラキシー反応の発生頻度は0.00007%とする報告があります。これは毎日100人の患者さんに麻酔をする歯科医院が、年中無休で40年間診療を行うと、1回起こるという計算です。歯科用局所麻酔注射薬は現在6種類が販売されており、麻酔薬のほかに血管収縮剤、添加物(防腐剤・抗酸化剤など)が含まれ、いずれにも極低頻度ですが、アレルギー反応が起こりえます。

 このように、全体的に見て頻度は少ないですが、いつ起こるか分からないのがアレルギー反応です。局所麻酔薬の1/3が歯科治療で消費され、また、1人の患者に繰り返し使用するという特性上、その取り扱いには十分な問診と、愛護的な技術が必要でしょう。 また近年、局所麻酔薬による接触性皮膚炎の頻度が上昇し、問題になっています。かなりのOTC薬品に局所麻酔薬が配合され、感作される機会が増えているのです。「麻酔した部分が、潰瘍になった・腫れてきた」そんな時は、「もしかしたらアレルギーが原因かも」と、ちょっと気にかけてみてください。

 麻酔がダメな理由は人それぞれです。少しでも、「あやしいな・やめたほうがいいかな」という時には、すぐに当科へご相談ください。

歯科コラム