2015.5月号
先日、根だけになってしまった前歯の抜歯依頼を頂きました。初診を担当した冨江先生と2年目研修医近藤先生により医療面接が行われ、高血圧・糖尿病・脳梗塞の既往もあることからコンディションを改善させた後、抜歯の予定となりました。もう少しお話を伺いますと、2日前より思うように歩けないとのコメント・・・。そう言えば入室時の動作がぎこちなく不自然でした。これは!!ということで直ぐに診療室お隣の神経内科野原先生へ診察をお願いいたしました。検査の結果、急性期脳梗塞により緊急入院となり、直ちに抗凝固療法が開始されました。入院2日目からはベッドサイドでのリハビリテーションが開始され、糖尿病のコントロール不良であったため(血糖値が朝100~夕200と安定しません)薬剤師による薬剤管理指導、栄養士による食事指導も加えた多職種によるチームアプローチが行われています。経過としては順調に回復され入院期間は2週間でしたが、独居の方だったため食事管理、公的社会資源の利用など、看護師による退院支援も必要でした。病院の中では医師以外の多くのコメディカルによるきめ細かいサポートがあることを改めて感じました。
野原先生からは歯科担当医の素早い連絡に「ナイスでした」とお褒めの言葉をいただきましたが、この機会にと、歯科診療所においても見逃したくない脳梗塞の初期症状をいくつか教えていただきました。
- 歩行時のふらつき(お酒の酔っ払いに似ています)
- 構語障害(いわゆる、ろれつが回らない)
- 手のしびれ
併せて脳梗塞では必ず血圧が上昇しているとのことですので(今回の患者さんも来院時の収縮期圧は206もありました)生体モニターは備えておきたいところです。
今回のエピソードは、たまたま歯科受診がきっかけでしたが、早期治療への橋渡しができて安心しました。少し寄り道をしましたが、そろそろ抜歯も再検討しましょうか。