2010年9月号 M43

2010.9月号

 「明治は遠くになりにけり」最近力ルテで明治生まれの方をみつけることが少なくなりましたが、同じ週にお二人の方を診させていただくことがありました。

 お一人目は以前より義歯の不調で時々お見えになるAさん。使い込まれた義歯は歯の部分がすり減って凹凸がなくなっており教科書的には合格点ではありませんが、お口の中に馴染んでいてご本人の不満も少ないようです。ご希望があるまでは、できるだけこのまま調整してお使いいただこうと思っています。いつも、娘さんがお付き添いですが、お独りでもしっかり歩いていらっしゃいます。

 お二人目はBさん。連携医の先生から「在宅で診ている患者さんで顎が腫れている」とのことでSOSをいただきました。救急車のストレッチャーでいらしたご本人は耳が少し遠く、言葉も少なめですが、受け答えは的確でした。根だけ残っている歯からの感染と思われ片側の顎下部がぷっくり腫れていました。この時代の方は皆さん我慢強いのですが、食欲旺盛だったご本人もさすがに食が進まなくなったようです。抗生剤を用いて消炎後、抜歯処置で約1週間の入院加療をお願いすることになりました。この方は要介護5ですが、同じ敷地内にご長男夫婦がいらっしゃって、入院中もよく付き添っておられました。

 コンディションはそれぞれですが、お二人とも認知症とも無縁と思われ、ご家族に囲まれ幸せそうです。(加えて可愛いお孫さんなどが一緒にお見えになるとこの上なく微笑ましいです)お口の中も8020と申し上げたいところですが、残っている歯は片手ほどの数です。クオリティ・オブ・ライフは単に歯の数だけではないと感じました。

 さて、この二人にはもう少し共通点がありました。なんと生年月日が同じだったのです。そして先日めでたく100歳(明治43生)になられました、おめでとうございます!

歯科コラム