2002年5月号 一人ではないのは心強いこと

2002.5月号

 2月13日夜、城南7歯科医師会の皆さんとの合同懇親会が当院食堂で開催されました。お忙しい中、80人を越える連携医がご参集下さり大盛況でした。本当にありがとうございました。
宴の後、大盛況だった余韻に浸りながら、会場で服部院長と残ったお酒を飲みつつ話す機会がありました。その時に特に印象に残った院長の言葉がありました。 「オールマイティになる自信はないからオレは勤務医を続けてきた。」でした。
 私自身、大学卒業以来何度か開業を考えたことがあります。ご存じのように、私が卒業した昭和40年代は歯科医が全国で3万人程度と希少価値も高く、競争も激しくない時代でありました。それでも臨床とともに経営も一人でこなさなければならない煩わしさから、大学から都立病院と、常に歯科医が複数存在する職場に護られ続けてきました。
 専門の違う仲良し同士が協同で歯科医院を運営すればよいのでは・・・と考えたこともありました。しかし、金銭の問題は友情をずたずたに壊してしまうことを見聞きし、あきらめました。
 現在はよい同僚に恵まれています。口腔外科が専門なのに顎補綴までこなす、集中力のすごい市川医長に加え、大学で教わった治療レベルを崩さず補綴にいそしむ長谷川先生と一緒です。彼の採った印象を見ていると自分の仕事のいい加減さを思い知らされて、顔から火がでることもしばしばです。義歯の人工歯排列をはじめ個歯トレーに至るまでの技工を夜遅くまで残って黙々とやっています。彼にまともな昼食を食べてもらうことが、歯科のみんなの願いです。この頃、私も 触発されて形成・印象とも多少なりともきれいにと心掛けるようになりました。
 歯科衛生士、看護師をはじめとしたパラメディカルの方々や事務方にも護られています。保険請求のレセプトも事務の方々が整えてくれたものを月初めに点検するだけでよいのです。これら恵まれた環境に置かれておりますから、たった一人で歯科医療の最前線に働く開業の先生方のお役に立つのは私の務めであり、喜びであります。

 大学の歯科麻酔科に在籍していた頃は全身麻酔をかけることで、顎顔面領域の悪性腫瘍の患者さんに連日のように接していました。当科には年に数例、そのような患者さんがいらっしゃいます。大学の頃とは比較にならないほどの少ない数ですが、数が少なくなったおかげで、大手術を受ける患者さんの気持ち、その後ろに控えるご家族の気持ちさえにも思いがおよぶようになりました。
痛みを訴える患者さんに、痛そうな顔をして聴いてあげられる歯科医になりたく思います。その願いを叶えてくれる、心の余裕を持てる職場です。
当院の副主事医制度がきっかけとなり、この4月から、病院歯科共同治療管理料が健保に導入されました。早くも先月、記念すべきその第一号の連携医が、患者さん同伴でいらっしゃいました。皆様も機会がありましたら患者さん同伴で、是非われわれの職場においで下さい。

歯科コラム