2022.3月号
歯科口腔外科 医長 齋藤浩人(さいとう ひろと)
先日、80代の女性が「舌がピリピリする」ということで来院されました。一人で来院され、受け答えもハッキリ、残存歯20本以上、清掃状態も非常に良好で快活な女性でした。口腔内を診察すると、特に舌に異常所見は認められず。強いて気になると言えば、口角に発赤が見られる程度でした。所見からカンジダ症を疑い、細菌検査およびFe,Cu,Znを含む血液検査を実施しました。その結果、カンジダは検出されませんでしたが血液検査で若干の腎機能低下とZnが目立って低値でした。つまり、舌痛症の原因はZn不足と考えられました。Zn不足と言えば、味覚障害のイメージが強いかと思いますが、舌乳頭の萎縮や平坦化のような器質変化をも引き起こすことから舌痛症にも関連しているとも言われています。
この女性には、食事指導に加え、市販のZnサプリメントも勧めて実践していただいたところ、徐々に痛みが軽減してきました。舌痛症は対応に苦慮することが多いと思いますが、その原因となることは何か?の引き出しが多いほど、解決の糸口も見つかりやすくなります。血液検査など、なかなか実施しにくい場合は、当科へご紹介いただければ対応いたします。