われわれ歯科医師を悩ませている問題のひとつに薬(ビスフォスフォネート製剤、デノスマブなど)の副作用からはじまる薬剤関連顎骨壊死(以下MRONJ)があります。米国口腔顎顔面外科学会(AAOMS)はポジションペーパーを2007,2009,2014に、発行してきましたが、今回、8年ぶりに改訂されましたのでその概要を一部ご紹介します。
まず、抜歯時に骨吸収抑制剤の休薬するか?の問いには「どちらの意見のエビデンスも不足していて未だ議論の余地はある。」と記載されていますが、2014年には記載されていた休薬期間の記載はなく、休薬を推奨しない方向にシフトしていると考えられます。また、「抜歯がリスク要因ではなく、ほとんどの抜歯した歯にはあらかじめ周囲に異常があったことは明らかであることから炎症が強く関与している。」とあり、骨吸収抑制剤投与前の口腔衛生維持の重要性を訴えています。
もうひとつは、MRONJの治療についてです。「保存治療は依然として有用であるが、手術療法はすべての病期で高い成功率を示し、有効な選択肢であるとの報告が増えている。」と記載され、早期の外科的介入も今後の治療に対するオプションの一つになると考えられます。
上記は一部ですが、今回の改訂では従来のMRONJの対応である「抜歯前には休薬」、「発症しても手術はできない」から変化しつつあると思われます。
当科では医科とも連携しながら常に新しい知見を取り入れ、対応にあたっています。なにかございましたらご相談いただければ幸いです。
参考文献:Ruggiero et al. American Association of Oral and Maxillofacial Surgeons' Position Paper on Medication-Related Osteonecrosis of the Jaws-2022 Update, J Oral Maxillofac Surg. 2022 May;80(5):920-943.