2021.5月号
御家族の付き添いで、杖歩行の90歳女性が紹介来院されました。歯を1本抜いた後から1年近く口角炎が治らないとのことで、確かに両側の口角に典型的な潰瘍が生じており、口を開けると痛そうでした。比較的ポピュラーな口腔粘膜疾患なので、定番の抗生剤軟膏を処方しましたが全く改善しません。歯が少なくなり咬み合わせが低くなることで、唾液が口角の皮膚に停滞することも原因になるので、医科クリニックの先生からは義歯の作製を勧められたそうですが、顔貌からは残っている歯の咬み合わせを修正する必要はなさそうでした。困ったときにいつも頼りになる同僚の歯科スタッフにお知恵を拝借し、細菌検査を施行したところカンジダ菌が検出されたので、抗真菌剤の軟膏を処方し、これで解決!と思ったのですが、次の来院日にも全く治っていません。予想外の展開なのでご家族にお聞きすると、軟膏塗布は本人に任せているとのこと。「ちょっと塗ってみてください」と見せていただくと、チューブの先を直接口唇に当て、ほんの少しちょんちょんと塗るだけでした。・・・なるほど治りにくいわけです。ご本人は間違いなく塗っているのですが、塗布の場所・塗り方・量などは実技指導が必要であると再認識しました。幸い次の来院時には「今までで一番良いです。唇が切れなくなった」とお喜びの言葉を頂きました。薬のコンプライアンスは些細なことですが、治癒を得るには必要条件になるのでしょう。
★歯科の診療体制は現在のところ外来診療は通常どおりで新患予約も受け付けております。
入院症例は十分対応できない可能性もありますが、よろしくお願いいたします。