2014.9月号
先日、歯科訪問診療を長年行っている地区歯科医師会の先生にお願いし、訪問診療に同行させていただく機会を得ました。歯科のない病院・老人ホーム・居宅の3か所の訪問でしたが、正にこれからの時代に歯科が関わっていくべき一つの方向性を経験させていただきました。
回復期病院では看護師との情報交換もスムーズに口腔ケアの方法、嚥下訓練などを指導されており、特に口腔内を良好に維持して退院後のステージに送ることに苦慮されておられました。次に向かった介護施設は充実したケアが受けられるホテルのような環境で、患者さんとの会話も和やかにご機嫌伺いです。自分の老後をふと思い、帰り際に「入居費用はいかほどなのでしょうか?」とお聞きしたところ「聞かない方がいいですよ」と・・。ちょっと世界が違ったようです。居宅の患者さんは交通外傷による後遺症の方で、摂食指導によるリハビリを継続されていました。ご家族の協力も素晴らしく回復の実感をうれしそうに話されており、「口から食べること」が人間の尊厳にかかわることを改めて実感しました。訪問医との長いお付き合いだからこそ得られる地道な経過です。
病院の中で行われる医療とは異なり、訪問診療は生活の場で行われる医療です。患者さんそれぞれの病状はもちろんですが、訪問先それぞれの環境に合わせたものでなければならないことが、実際の現場を見させていただき肌で感じることができました。
今後、在宅や施設で療養され、外来通院が困難になる方は必ず増加すると考えられますが、機材の準備や移動手段、訪問先との打ち合わせなど、診療所内に比べ約2倍の時間がかかるといわれています。最前線の現場で仕事をされる先生方の後方支援は当科の大きな役目であると考えており、病院への搬送の負担はありますが短期の入院で集中的にご依頼に対応しています。口腔内の観血処置のみならず、局所麻酔が必要な齲蝕処置、誤飲が心配なケースの印象採得、摂食嚥下の評価など、ぜひお気軽にご相談ください!