2015.11月号
8020達成者が増加している今日においても、虫歯はいまだに多く見られる口腔内の慢性疾患です。そして医学が発展した現代においても、虫歯を防ぐ方法は昔と変わり映えしないもので、すなわち毎日の歯ブラシと甘味料の摂取制限です。先日、ある患者さんからコメントを頂きました。「先生、歯磨きって食べ終わってすぐにしない方がいいんですってね」これは今までの常識を覆すものですが、数年前に外国から発信されマスコミでも取り上げられたようです。食直後は、歯の表面が酸性に傾いており、歯質が弱くなっているため歯ブラシを控えた方が望ましく、唾液の中和作用によりpHが回復してから(約30分後)磨いた方が効果的との考え方です。確かに実験ではそのような結果ですが、現実的にはきちっと食後にインターバルを置いてから歯を磨ける状況にあることは少ないと思いますので、そこまで気にする必要はなく、歯磨き習慣の方が大切ですよ、とお伝えしました。「歯磨剤は何がいいですか?」と聞かれることも多いですが、これに関しては唯一虫歯予防に効果があるとされているフッ素配合のものをお奨めすることになります。(フッ素が含まれていないものは現在ほとんどないと思いますが)
ところで皆さまご存じのキシリトールはどうでしょうか?砂糖の代替甘味料であり、細菌の増殖を抑えることにより虫歯予防に有効であるとされています。しかし、残念ながら今年発表されたレビュー論文では、虫歯の発生を減少させるという信頼できる報告は見つからなかったと結論付けています。但し、ガムに含まれているものでは唾液の産生を増加させることが予防に大きく貢献していると思われます。
なかなか虫歯予防に王道は無いようですが、歯ブラシの方法や用具の検討をする前に、まず大事なことがあります。それは、御本人の健康観のようなものですが、口の中の健康を守りたいという意欲です。これが足りないと何をお伝えしても結果は出ません。そして、その人の心に歯の重要性を訴えかけ、気持ちを動かすことは治療よりも実は難しいのです。
(注)11月25日(水)に恒例の城南7歯科医師会合同懇親会を開催いたします、是非皆さまご参加ください。