2014年1月号 口腔・嚥下ケアチーム発足

2014.1月号

 新年を迎え、今回は新しい活動についてご紹介させていただきます。「口から食べる」という食行動は身体・心理・社会的要素が調和して成り立つ生活行動であり、人間としての尊厳を左右する生命活動です。健康であれば当たり前に行っている飲み込み(嚥下)も身体の運動機能や脳活動をフルに活用する緻密なしくみから成っています。歯科サイドからの口腔機能に着目するだけでなく、包括的な心身の状態をみることが必要と思われます。

 まず、意識が覚醒し食べ物を認識できないと食べるという判断を脳が下してくれません。逆に、食べると言う感覚刺激は脳機能の活動を維持・向上させることにもなります。口から食べられるようになったら別人のようになられた患者さんを経験された方も多いのではないでしょうか。次に、脳で立てられたプランを実行するために安定した姿勢を保つことが必須です。(寝たままの仰向けでは飲み込むことができません)そして食べ物を口にうまく取り込むために首の筋肉が頭を支え、腕・手指の筋肉がバランスよく機能しなければなりません。ようやく口の中に食べ物が入ると、咀嚼と嚥下が待ち構えています。歯の咬み合わせだけでなく口唇や舌の感覚機能を活用し唾液と咀嚼された食べ物の味が口の中に広がることによって私たちは「食」という幸せを感じるのです。「ゴックン」という嚥下の行為は反射であり脳のコントロールを受けていますが、安全に食道に送り込むためには呼吸との協調運動も大切ですし、口腔ケアによる口腔環境の維持は言うまでもありません。

 このように複雑なシステムから成り立っている摂食・嚥下をサポートするために、このたび医師、歯科医師、認定看護師、管理栄養士、歯科衛生士、言語聴覚士、その他のメンバーから成る多職種協働型の口腔・嚥下ケアチームを立ち上げました。当科では齋藤真由先生が中心となり患者さんの評価や訓練指導、食形態の相談を行っています。急性期医療では在院日数の短縮化が推し進められていますので、摂食・嚥下障害患者に対する食支援は病院だけで完結することは少なく、退院後の地域連携を必要としています。転院先の病院、福祉施設や在宅など地域での継続した支援をお願いする際にはどうぞご協力をお願いいたします。

歯科コラム