2019年1月号 歯痛と飲酒

2019.1月号

先日ご紹介いただきました患者様ですが、冷たいもので上の奥歯が痛むという愁訴でした。歯周病による中等度の骨吸収はありますが、虫歯のような齲窩は見当たりません。健康な中年男性ですので、不定愁訴というわけでもなさそうですが、歯を局所的に冷やしても症状の再現性に乏しい状況でした。いろいろとお話を伺う中で、特徴的な誘発因子がもう一つあり「飲酒後30分ぐらいで歯茎から頬、眼、こめかみが激しく痛くなる。痛み始めたらアルコールが切れるまで3時間ぐらい続く」というコメントです。傍で聞いていた同僚の齋藤先生が「神経痛じゃないですか?」と助け舟を出してくれたこともあり、視点を変え改めて整理してみると、半年前に軽い脳出血で入院加療しており、来院時の血圧は160/106です・・・

1990年代ごろから頭痛や神経痛を含む顎顔面領域の痛み全般を対象とする口腔顔面痛と呼ばれる領域が確立されており、歯科関係者もこの分野に関わることがたびたびあります。「最初は歯の痛みだったのに最近は頭痛や肩こりもひどくて・・」という場合、中枢側の疾患が隠れている可能性があります。今回も先ずは、通いやすい近隣の脳神経外科病院へ対診を依頼いたしました。幸い緊急を要するような状態ではなく、慢性頭痛について治療を開始していただき、安易な歯科治療を回避することができました。今回のエピソードにはおまけがありまして、担当頂いた脳外科Drは私が学生時代御世話になった運動部の先輩だったのです! 約30年ぶりにお話しする機会ができ、連携のありがたさを実感いたしました。

( 2月26日の連携懇親会では、先生方からご紹介いただいた患者様の症例からお話しさせていただく予定です。どうぞお誘い合わせの上、ご参加ください。)

歯科コラム