2021年7月号 カンジダとワーファリン

2021.7月号
歯科口腔外科 冨江華織(とみえ かおり)

 コロナ禍で一人暮らしの90歳の母を施設に入れました。入居後、口内炎が治らずご飯が食べられないと娘と同伴で来院されました。カンジダ性口内炎と診断され、嚥下機能も弱そうだったのでフロリードゲルを処方しました。

 2週間後、娘がだいぶ痛みが良くなったんですけど、一昨日あたりから血の味がすると言っています。あっ、みなさんはすでにお気づきですかね?ワーファリンを内服していることをすっかり忘れて、併用禁忌のフロリードゲルを処方していました。嚥下に気を取られ、気遣いが仇となった完全な私の失態です。PT-INRは11(至適範囲1.6~2.6:70歳以上)まで上昇しており、すぐに循環器内科医師と連絡を取り、調整してもらいました。

 入院中や体調のすぐれない高齢者にはカンジダ性口内炎が多く発症し、誤嚥しにくいフロリードゲルや最近発売されたオラビ錠などが使いやすいと思われます。しかし、かなり多くの併用禁忌薬剤があり、注意が必要です。恥ずかしながら、私のインシデントが皆さんの役に立てればと思いました。

歯科コラム