2024.7月号
歯科口腔外科 部長 長谷川 士郎(はせがわ しろう)
先日、顎骨内の嚢胞に対して口腔外科的な対応が必要な1型糖尿病の患者さんをご紹介いただきました。生活習慣病と考えてもよい2型糖尿病に対し元々インスリンの分泌が足りない1型糖尿病は糖尿病全体の約5%いらっしゃるようです。糖尿病の状況についてお話を伺うと、「これを使ってます」と腰に着けた携帯電話サイズの万歩計のようなものを見せていただきました。それはセンサーから得られた皮下の血糖値によってインスリンを持続的に注入する小型のポンプで、簡単なボタン操作で注入量や注入タイミングを調整できるものでした。1型糖尿病はインスリンを継続的に投与する必要があるため、従来は指先で血糖測定を継続しながらインスリンの自己皮下注射で管理するのが一般的でしたが、このインスリンポンプによれば、機械が自動管理してくれます。当院の糖尿病内科関根先生にインタビューしたところ、血糖値の管理が楽になり、食事や外出などの生活に合わせて、人目を気にせずインスリンを注入することができるので恩恵は大きいのですが、操作方法の理解力などの点ですべての患者さんにお勧めできるわけではないとのことでした。そして、もう一つの注意事項があります。インスリンポンプは放射線・磁気の影響を受ける可能性があるので、装着部が撮影範囲外であってもこの器機を外していただく必要があるのです。この点については当院の放射線科スタッフに伺いましたところ、現状は撮影エリア内では外していただくという厳密な対応をしているとのことでした。歯科の画像診断でもすべてのX線撮影が該当すると考えられますので注意が必要です。歯科診療において糖尿病の患者さんには易感染性や低血糖に注意することが多いですが、インスリン療法を受けている方にはインスリンポンプの使用についても確認していただければと思います。
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