2016.7月号
当科の初診患者さんの多くは親知らずの抜歯依頼ですが、ある日はバラエティに富んでいました。
- 1人目(麻酔をするとドキドキする)歯科治療の局所麻酔で動悸が激しくなり治療中断、なんとそれ以来30年間麻酔をしないようにお願いしてきたそうです。今回意を決して、局所麻酔が使用可能かどうか調べてほしいというご希望でした。当時のエピソードから推測しますと、その可能性は低そうでしたが、不測の事態にも対応できるように鎮静法を用いた処置を提案させていただきました。
- 2人目(鎮静法での処置希望)かかりつけ歯科より大学病院を紹介されたが予約がなかなかとれず、ご自身でネット検索し、当科受診を希望されていらっしゃいました。下の奥歯の虫歯が大きく、もう少しで痛くなりそうで心配とのことでしたが、この方も歯科治療が苦手で、25年間歯科治療を避けて生活されていたそうです。頭が下がります。
- 3人目(上の前歯が痛い)歯の根が折れており、抜歯をしなければならないところですが、抗癌治療中のため、当科紹介となりました。日本人の2人に1人が癌になる時代ですが、歯科治療においても全身コンディション、薬の副作用などを考慮することが必要です。今年度から健康保険に緩和ケア患者への周術期口腔機能管理が認められており、当科の歯科衛生士も入院中の緩和ケア患者さんに口腔ケアの介入をさせていただく機会が増えてきています。
- 4人目(つめものが外れた)近歯科医院にて定期通院中でしたが、脳卒中後遺症、その他の疾患が合併し対応が困難となり紹介されました女性の患者さんです。治療もさることながらセルフケアに限界があるようでしたので、御主人の協力をお願いしながら、患者さんの状況に合わせたプランを検討することになりました。当院医科の通院と合わせて受診していただきますが、訪問歯科の利用を視野に入れることも提案する予定です。
この日はめずらしく口腔外科手術関連の方はいらっしゃいませんでしたが、幅広いニーズにお応えできるところは当科のアピールポイントの一つです。口腔内の訴えに対して隣接器官の影響を検討し、全身疾患を考慮しなければならない方が増えている昨今、医科の先生も在籍している総合病院の歯科だからこそ、今の仕事が続けられていると日々実感しており、これも連携医先生方からの刺激的なご紹介あればこそと感謝しております。